17日の土曜プレミアム(フジテレビ、午後9時~)は『特別編集版「鬼滅の刃」遊郭潜入編』。「遊郭編」の特別編集版として、「遊郭潜入編」「遊郭決戦編」が2週連続で放送される。遊郭で花魁を演じていたのが鬼・堕姫だが、彼女はなぜ遊女に化け、遊郭で生きていたのか。過去の記事で振り返る(この記事は「AERA dot.」に2021年12月20日に掲載された記事の再配信です。肩書、年齢等は当時のもの)。
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【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。
『鬼滅の刃』アニメ2期「遊郭編」の第3話では、ついに遊郭に潜む鬼「堕姫(だき)」が登場した。堕姫は鬼でありながら人間に擬態し、遊郭で人気を博す華やかな花魁を「演じて」いた。だが、“人間”としての堕姫の言葉からは、周囲へのいら立ちと激しいストレスが感じられる。「人を喰う」ことが本能である鬼が、無理をして人間社会に適合し、遊女として仕事までしていたことは異様とも言える。なぜそこまでして堕姫は“人間の遊女”として振る舞ったのか。堕姫の行動、セリフを掘り下げることでその理由を考察してみる。<本連載が一冊にまとめられた「鬼滅夜話」が発売されました>
なぜ“遊郭の鬼”はあれほどいら立つのか?
「遊郭編」は、放送前の一部からの懸念をよそに、遊郭の美化は行わない、という姿勢が貫かれている。それどころか遊郭を棲家(すみか)とする鬼の視点を通じて、「苦界」に身を置かざるをえなかった人々の悲憤が伝えられる。
遊郭の鬼は、鬼殺隊隊士・我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)が潜入捜査している「京極屋」という店に潜んでいた。その名を堕姫(だき)といい、最高位の遊女である“花魁”・蕨姫(わらびひめ)として、客からの人気を博していた。
しかし、蕨姫(堕姫)は、その愛らしい容貌に反していつもいら立ち、周囲の者たちに当たり散らしていた。
<五月蝿い(うるさい)!ギャアじゃないよ 部屋を片付けな>(堕姫/9巻・第73話「追跡」)
まだ幼い禿(かむろ ※花魁の世話をする見習いの少女)を叩き、罵倒し、いじめる。耳がちぎれるほどにひねり上げる。これらの堕姫の暴力シーンに出くわした善逸は、周囲への警戒を一瞬忘れ、少女をかばってしまう。堕姫はそんな善逸を一撃で殴り倒した。
<気安く触るんじゃないよ のぼせ腐りやがってこのガキが>(堕姫/9巻・第74話「堕姫」)