がん治療にはお金がかかる。どれくらい治療費がかかるのか。がん保険の加入を検討すべきなのか。がん経験者の専門家らに聞いた。AERA 2024年2月19日号より。
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お金の問題は、がんと切り離せない。治療費でどんどんお金が出ていく一方で、休職や退職で入ってくるお金が減少する。
最初の1年間にかかった「がんにまつわるお金」が約250万円──。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんの話だ。
黒田さんは2009年8月、40歳で初めて受けた自治体のマンモグラフィー検査で異常を指摘された。様々な精密検査を経て同年12月上旬、ステージIIBの乳がんと告知された。娘が5歳になったばかりで絶対に死ぬわけにはいかない。
セカンドオピニオンを求めて東京都のがん治療専門病院へ転院。そこでの診断は、当初のステージより軽いステージIIAで抗がん剤治療は不要となった。
翌2010年2月に右乳房の全摘手術を受け、4月からはホルモン療法開始。8月に乳房再建手術、11年5月に乳頭再建手術、8月に乳輪再建手術を受けた。ホルモン療法が終了したのは2012年1月だ。現在、乳がんで受けている治療はないが、乳腺外科と形成外科の年1回の定期検査は続けている。
「がんにかかるお金は、大きく分けて三つ。病院に支払う医療費、病院に支払うその他のお金、病院以外に支払うお金です。みなさん、がんになるとお金がかかると思っているのですが、それは病院に支払う医療費をイメージしている。保険適用になる医療費であれば、高額療養費制度が適用になります」
一方で病院に支払うその他のお金、病院以外に支払うお金は高額療養費制度が適用されない。
「病院に支払う医療費は『かかる費用』、それ以外は個々が『かける費用』となり、かける費用が結構かかるんです」
差額ベッド代、先進医療、診断書作成料、病院までの交通費、ウィッグ代、健康食品……。「交通費なんてそんなにかかる?」と思うかもしれないが、がん治療中は体力の低下が著しく、電車に乗ることがままならず、タクシーを使わざるを得ないというケースは珍しくない。子育て世代であれば、シッターを頼まなければならないこともあるだろう。