「私で言えば、当時はシリコンインプラントの乳房再建は全額自己負担で163万円。仕事のことも考え個室入院だったので、差額ベッド代約30万円。主治医の勧めで、乳がんの転移の有無を確認しリンパ節を切除するか決める先進医療も行っていて、当時は自己負担でした。治療は標準治療で保険適用対象であっても、医療費の中に全額自己負担のものも含まれます」

 結果、「かかるお金」と「かけるお金」の合計が、先に示したように約250万円。ちなみに黒田さんは、ファイナンシャルプランナーではあるが、がん保険には入っていなかった。

 2人に1人ががんになるという時代。がんを発症していない人は、がん保険に入るべき? 女性のがん経験者向けの保険を提供している「MICIN少額短期保険」代表取締役の笹本晃成さんの考えはこうだ。

「ご自身の収入で貯蓄が作れていて、がんになって収入減、または途絶えてしまった時も、貯蓄から出して十分にやっていけるという人は、保険に入る必要はないと思います。ただ、国立がん研究センターがん対策情報センターの『患者体験調査報告書 平成30年度調査』では、経済的な理由で望んだ治療が受けられなかったと回答した人が4.9%、その中の約7割が保険診療範囲内での治療を受けることができていないとの回答でした」

 黒田尚子さんによれば、がん治療費の目安は標準治療の場合で年間50万~100万円。がん種、進行度によって千差万別だが、自分の収入なら高額療養費制度でいくら戻ってくるかを計算し、がんになった場合いくらくらい用意したらいいかを計算。それによってがん保険の要否を判断するといいかもしれない。(ライター・羽根田真智)

AERA 2024年2月19日号より抜粋

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