佐:そうなんです。私は別に三男は灘でなくてもいいと思っていました。「別の学校行ってもママは文化祭とか行くのを楽しみにしているよ」とか言っていました。でも本人は灘に行きたいと。そこで私、どうしたら挽回できるか3日間じっくり考えたんです。候補としてはテキストの弱点をやり直すか、今までのテストをやり直すか、過去問をやるか。
過去問を19年分
安:そこですぐに他人に聞くのではなく、ご自身でしっかり考えているところがさすがです。
最近の親御さんたちはすぐに答えを求めるから……。うちの子何やったらいいですか? 過去問はいつからですか?って。それは本当に子どもによるんですよね。
佐:私もその時は本当にこれでいいのか不安でした。でも三男も「過去問やる」と言ったので腹をくくりました。当時は平成19年度の入試だったので19年分やろう、と決めて、算数、国語、理科の19年分の過去問を全部集めて、4部ずつコピーしてファイルに入れました。もう家の中がコピーだらけになりました。それを毎日各教科1問ずつ、寝る前の11時半から12時半の1時間をめどに一緒にやっていったんです。
安:それだけ血の滲むような努力をした、ということですよね。でもこれも三男さんに「絶対受かりたい」という強い気持ちがあって、佐藤さんと三男さんの熱量が合致していたからこそできたのかな、とも思います。今の時期、そこまでの気持ちがある小学生はまだ少なくて、どこどこの学校に行きたいとは言うけれど、それほど強い思いはないのが普通です。
佐:過去問をやらずにテキストやテストの見直しをやるにしても単にやりなさい、って渡すのではなく、ちゃんとコピーをしてやる問題だけを切り貼りして1枚ずつ渡していたと思います。やはり子どもが「やりたい」と思わせる工夫を親がしないと子どもはやらないです。
(編集ライター・江口祐子)
※AERA 2023年9月25日号より抜粋