水上さんは「当時の経験があったからこそ、やさしくなれた」という(撮影/写真映像部・和仁貢介)

「痛み」ってなんだろう

「というか、『痛みってなんだろう』と興味を持ち始めたことです。大変な時期を経て、でも、当時の経験があったからこそ、やさしくなれたという自覚があるんです。当時はもちろん大変でしたけど、今となってはそれこそ(戦争など苦境を乗り越えた)『ブギウギ』のように、笑って当時を顧みることができるくらいの状態にはなれた。当時があったから、今があるんだよな、とは思います」

 痛みを知ったからこそ、優しくなれた?

「なんでしょう……、やさしさって、痛みを知るって、なんでしょうね。僕なりに『こうかな』という考えはありますが、それも正解だと僕は思っていないので。でも、痛みを知ろうとする姿勢みたいなものが、やさしさなのかなと思います」

余計なことをやって、一言多い

 一方で、変わらぬところもある。「やんちゃ」さだ。本名を名乗るようになってからのほうが、「やんちゃな部分を出し過ぎてしまうこともある」といたずらっぽく笑った。

人懐こい笑顔を見せる水上さん。同世代のカメラマンと楽し気にやりとりした(撮影/写真映像部・和仁貢介)

「水上になってからそういう部分をちょいちょい出して、失敗したこともあり、成功したこともあり……。でも、基本的に僕はやんちゃで余計なことをやりがちで、一言多かったりする人間で。時と場合によってはそれが必要ない場面もあって。『ここでは出していい』というときもあるので、それをわきまえながら大人になっていきたいなと思います。……って、もう十分大人なんですけど(笑)」

 撮影中、カメラマンが同年代と知り、気さくに話し、ツッコんで、場を盛り上げた。

 4年前、「自分の多面性を見せたい」と語っていた。芝居をする喜びに満ち溢れた20歳のきらめきも魅力的だったが、経験を重ね、人としての厚みが増した24歳の姿もまた、まぶしい。(文中敬称略)

(ライター・市岡ひかり

※後編「水上恒司「死を意識して生きています」 自分の“エキス”で膨らませた愛助を生き抜く覚悟」では、愛助について語ってくれました。

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同世代のカメラマンと話し、笑顔を見せる水上さん