「長期の資産運用は米国株をメインに据える(全体に占める米国株の比率は個々で異なる)のは王道」と、楽天証券チーフグローバルストラテジストの香川 睦さん。写真/本人提供

「つみたて投資で米国株をメインにステイ・インベステッド(長期投資)し続ければ、老後の資産形成に大きく寄与してくれるはず」

 米国株の優位性は、企業が株主の資金を活用して、どれくらい利益を上げているかを示した「ROE(自己資本利益率)」にも端的に表れているという。

「主要株式市場別の直近2023年の予想ROEを比べると米国企業が17.6%と突出して高く、日本の企業は8.7%。米国の半分にも達していません。

 効率的に株主のために利益を稼いでくれるという意味でも、米国株がポートフォリオの中心にあるといい。

 米国は総人口も労働人口も増え続けている先進国で唯一の国。最近では生成AI(人工知能)がブームになるなど、新たな技術革新が次々と起こるのも強みです」

全世界株式のよさ

 ところで、ここ数年の全世界株式はS&P500よりたいてい、成績が少し低い(要するに「儲かり度」という点で劣る)。

 米国株のリターンが高い今、米国株に加えて日本株や中国株など他の国も常に入っている全世界株式のほうが低くなるのは自然な話だ。

 この先もし米国株がダメになったら、S&P500など米国株100%の指数は下落し、全世界株式も同様に下落しながらも米国株比率がスルスル下がっていく。

 しばらくすると、全世界株式では米国の代わりに調子のいい国の組み入れ比率が上がっていく。

 米国株100%のS&P500や全米株式か、仮に米国株が失速しても長期ではなんとかなりそうな(気がする)全世界株式にするか。

 結局はリスクの取り方の問題なのである。リスクを取ればハイリターンを得られる可能性が高い。逆もまたしかり。

大学受験の過去問

 ここで前出の前山さんがおもしろい表現をした。

「過去の実績は、大学受験の過去問題のようなものです。過去問を信用しすぎて、本番で痛い目に遭うこともあります。

 テストで手堅く70点を取ることを目指すなら全世界株式を持てばいい。

 一国集中のリスクは承知で100点を目指すならS&P500を持つ。そんな感じで考えてみてはどうでしょう」

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S&P500と全世界株式で迷う人の心理