ニッセイ基礎研究所の前山裕亮さんによる、「毎月1万円×20年」で投資期間を1年ずつずらした試算。どの時期も、元本(財布から出したお金)は240万円。表は、それぞれの投資期間でインデックス型投資信託をつみたてて保有したら20年後にいくらになっていたかを示す(いずれも、新NISA用のシミュレーションのため税引き前)。この31パターンの前半では、米国が高インフレによる金融引き締めの時代で現在より厳しかった。そこからマイクロソフトやアップル、アマゾン・ドット・コムなどが輝きだした。投資期間を20年で見るとこうなるが、5年などの短期一括投資になると、また結果は微妙に変わる。S&P500、MSCI ACWI(オール・カントリー・ワールド・インデックス。この指数がない期間はMSCI ワールド・インデックスを使用)は配当込みの指数をその時々の為替で円換算した数値を使用

日本株最強の時期もあった

「検証の結果は、1973年から2003年までの、どの年から20年間つみたて投資をはじめても、ほぼS&P500の成績が全世界株式を上回りました」

 シミュレーションの表をよく見ると、S&P500とMSCI ACWIの運用成績がそれほど違わない時期や、TOPIXへの投資が最も儲かった時期もあった。

「つみたて開始年が1990〜1991年(つみたて終了年は2009〜2010年)の場合、運用終盤の2000年代にBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字)諸国の経済発展が注目されるなど新興国株式への投資がブームになりました。

 そのため、この期間は新興国株式にも投資している全世界株式がS&P500に肉薄するほどの成績を収めました」

 1975年スタート、1994年終了の20年間だけは、TOPIXの成績が一番よかった。

「1970年代は米国がちょうど2022〜2023年(現在)のように物価高と高金利に苦しみ、米国の『株式の死』といわれるほど市場が低迷した時代でした。

 その頃、世界的に注目が集まり、バブルが発生したのが日本株です」

 今では考えられないが、1990年代初頭の頃には、全世界株式の組み入れ比率ナンバーワンは日本株だった。

 米国だけでなく、新興国や日本の株も含まれ、投資する国や地域すら選ぶ必要がないので「国選びを間違えた」という失敗がない点が全世界株式の魅力。

米国株を「主体に」投資

 かといって米国株が悪いというわけでは全くない。ここで楽天証券経済研究所チーフグローバルストラテジストの香川睦さんに聞く。

「過去は未来を映す鏡といわれます。過去の実績からすると、米国株を主体に分散投資したほうがいいことは明らかです」

 米国株を「主体に」だ。香川さんは「S&P500や全米株式は米国株だけに投資しますが、全世界株式にも6割程度の米国株が入っています。先進国株式なら約7割。どれを買っても米国株メインで投資していることに変わりはないわけです」と付け加えた。

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全世界株式はS&P500より儲からない?