大学受験が本格的なシーズンに突入した。過去に話題となった記事を再配信する。(この記事は、2023年9月19日に配信した内容の再配信です。肩書、情報等は当時)
【作家の出身大学ランキング】主な文学賞、芥川賞、直木賞はこちら(全3枚)
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大学は幅広い教養、高度な専門知識、最先端の技術を学生に教えるところだ。そのために優秀な教員がそろい、施設が充実している。キャンパスでは多様なバックボーンを持った仲間と知り合うことができる。また、大好きなことを一生懸命に取り組む時間と空間がある。このような環境からさまざまな分野で文化の担い手が生まれる。そのなかから優れた作家、俳優、芸人、ミュージシャンが誕生しているのだ。「作家の出身大学」ランキングをもとに、大学の強みを読み解いていこう。発売中のアエラムック「就職力で選ぶ大学2024」(朝日新聞出版)より紹介する。
早稲田大から大物作家が多数輩出
作家と縁がある大学はどこだろうか。
芥川賞、直木賞を受賞している作家をもっとも多く送り出しているのは、早稲田大である。2023年上半期の芥川賞受賞者、市川沙央は、今年、早稲田大人間科学部通信教育課程を卒業したばかりだ。早稲田大の田中愛治総長はすぐに「お祝いの言葉」を発信している。
「……芥川賞を受賞されたことは、輝かしい快挙です。同時に、ダイバーシティとインクルージョンの大切さを体現されたことに、心から敬意を表します。市川さんのご努力は、早稲田大学の誇りです。改めまして、本当におめでとうございます。2023年7月20日」(大学ウェブサイト)
1990年代以降、早稲田大は芥川賞作家として辺見庸、小川洋子、多和田葉子、保坂和志、綿矢りさ、磯㟢憲一郎、滝口悠生などを生み出した。直木賞受賞者には高橋克彦、乃南アサ、重松清、角田光代、船戸与一、三浦しをん、恩田陸、朝井リョウなどがいる。
朝井は、早稲田大を選んだ理由をこう話す。「堀江先生の授業を受けたいと思って志望したんです」(日本私立大学連盟「大学時報」13年7月号)。芥川賞作家の堀江敏幸をさしている。堀江は早稲田大の学生時代、文学を講じていた平岡篤頼教授に学んだ。平岡の教え子には前出の小川、重松、角田などの人気作家がいる。
そして早稲田大出身の超大物作家といえば、村上春樹だ。多和田葉子とともにノーベル文学賞の候補として取りざたされている。
在学中から才能を開花させていた作家も
ほかの大学出身で芥川賞、直木賞の受賞者、人気作家を見てみよう。
慶應義塾大出身では芥川賞の荻野アンナ、朝吹真理子、直木賞のつかこうへい、村松友視、大沢在昌、池井戸潤、金城一紀がいる。
明治大は芥川賞の唐十郎、羽田圭介、直木賞の山田詠美、天童荒太などが輩出した。中沢けい、落合恵子、作詞家の阿木燿子なども文壇で活躍している。
法政大の芥川賞作家、藤沢周、吉田修一は骨太な小説を発表している。
成蹊大は直木賞の小池真理子、桐野夏生、石田衣良、井上荒野を送り出した。 青山学院大は、直木賞のねじめ正一、姫野カオルコがいる。ほかに、あさのあつこ、松浦理英子、詩人の伊藤比呂美などがいる。あさのは児童文学分野で活躍し、小説『バッテリー』は累計で1千万部を超えた。
立教大には直木賞の伊集院静、なかにし礼、村山由佳、島本理生がいる。ほかには『鹿の王』で本屋大賞を取った上橋菜穂子、『負け犬の遠吠え』で婦人公論文芸賞を受賞したエッセイストの酒井順子、そして、新井素子、柚木麻子などもいる。
国際基督教大では芥川賞の奥泉光、直木賞の髙村薫が学んだ。
中央大には直木賞の逢坂剛、志茂田景樹、木内昇がいる。ほかに、少女向けライト小説の第一人者、田中雅美がいる。