安倍晋三元首相の母・安倍洋子さんが4日、死去した。95歳だった。岸信介元首相を父に持ち、夫は安倍晋太郎元外相、そして晋三氏の母として「安倍家三代」をずっと側で見続けてきた。政界のゴッドマザーとも称された洋子さんはどのような人物だったのか。長年交流のあった元山口新聞東京支局長の濱岡博司さんに在りし日の思い出を聞いた。
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「洋子さんの思い出は言い尽くせないほどあります」
そう語るのは、かつて山口新聞で東京支局長を務めた濱岡博司さん。濱岡さんは約40年前、洋子さんから晋三氏についてこんな相談を受けたという。
「うちの息子には交際相手とか浮いた話もない。あなた誰か連れてきてくれない?」
そのころ、濱岡さんは地元の山口県から上京し、電通などの大企業を取材で回っていた。電通社内で知り合いの社員に相談していたところ、思いもよらない「奇跡」が起きた。
「たまたま、目の前で(晋三氏の妻となる)昭恵さんが書類のコピーを取っていたんですよ。知り合いの電通社員が、『じゃあ、あの女性どうですか』と言ったことで縁談が決まったんです」
人生とは偶然と必然が交錯するもの。当時、昭恵さんが電通の社員として働いており、その時たまたま濱岡さんが電通を訪れていたことが、2人を結びつけたのだ。
2人を東京・原宿のカフェバーで引き合わせた濱岡さん。昭恵さんは50分ほど遅れてやってきたが、晋三氏は待ち続け、遅れてきた昭恵さんを笑顔で迎えたという。それがきっかけで交際が始まった。
晋三氏のキューピッド役となった濱岡さんと洋子さんの付き合いはその後もずっと続いていく。