分からないことが判明し、それをクリアする経験を通じて、部下は徐々に自分で問題を解決できるようになる(写真はイメージです、gettyimages)
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 マネジメントを行うには、部下の成長度合いや状況をしっかり把握しなければなりません。じっくり部下を観察すれば、ある程度現状は分かりますが、表面的に見えない部分を把握することは難しいでしょう。実は、リーダーとして本当に知るべきことは、外側からは見えにくいことである場合が多いのです。この課題解決のためにマネジメントが重視すべきは、「部下への質問」です。質問をマネジメントで生かすことには以下の4つの効果があります。(1)部下の持っている情報や状況を把握できる、(2)部下が(課題解決策などを)自ら考えるようになる、(3)部下が課題解決策を見つける過程で、新たな気付きを得る、(4)部下の行動が促進され、モチベーションアップにつながる。今回は「部下への質問」における注意点や効果的な質問方法などについて解説します。(メンタルチャージISC研究所代表取締役 岡本文宏)

質問に質問で返すことで 「自ら考える人材」に育てる

 業務上で何か問題が起きた際、その解決策を自分で考えず、第三者に答えを求める人が増えています。これは、リーダーと呼ばれる人たちの関わり方、コミュニケーションの取り方に原因があると考えられます。

 部下に「分からないことがあれば何でも聞くように」と伝えると、少しでも分からないことがあれば、すぐに答えを求めて指示を仰ぐようになります。入社したばかりで、まだ研修中というのなら、それでも良いのですが、研修が終了した後でも、指示を受けてそれをこなすだけというスタンスを続けることになると、仕事に面白さを感じませんし、いつまでたっても成長しません。

 そうならないために、リーダーは部下との関わり方を変えていくことが必要です。具体的に言えば、「指示する」スタンスから、部下に「自分で考えさせる」スタンスへシフトチェンジしていくのです。

 例えば、部下がリーダーに「どうすれば良いでしょうか?」と尋ねてきた際、「どうすれば解決できると思う?」とか「あなたがリーダーならどう対処する?」と質問で返すようにするのです。

 リーダーが質問をすることで、部下の脳はその答えを見つけようとアンテナを伸ばし、検索を始めます。ただし、まだ質問をされることに慣れていないうちは、考えることを途中で諦めて「分かりません」と答える人もいるでしょう。その場合は、「何が分からなくて、どこまで分かっているのか?」について丁寧に聞き出して、部下の頭の中を一緒に整理していきましょう。

 分からないことが判明し、それをクリアする経験を通じて、部下は徐々に自分で問題を解決できるようになります。少し時間はかかりますが、自分で答えを見つけ出すトレーニングを繰り返すことで、自ら答えを導き出せる人材に育ち、成長が加速します。

 このことは、私自身が子育ての中で実践してきたことでもあります。子どもたちが小学生の頃から、私は子どもたちに対し、質問を投げ掛けることを日常的に行ってきました。

 大学生になった息子から「幼少期に質問攻めにあったのは嫌だったけれど、今は自分で考えて行動することが容易にできたり、意見を述べることが自然にできたりするので良かったよ!」と言われたときは、自分の判断が正しかったことが分かり、うれしく思いました。

絶対にやってはいけない 「2つの質問」とは

(1)誘導尋問

 私が以前、アパレル専門店チェーンに勤務していたとき、会議の場で上司から「●●の件について、私は▲▲▲と考えているが君たちはどう思うかね?」と質問を投げ掛けられたことがありました。

 上司が既に決めていることに対して意見を求められたとしても、部下の多くは「YES」としか答えられません。別の考えをその場で言える人は、よほど図太いか、揺るぎない持論を持っている人などまれにしかいません。これでは質問をする意味がありません。

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