ES作成にAIを使う学生が増えているという(写真/アフロ)
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 あまりに便利がゆえに、就活でAIを「使うな」はさすがに無理がある。大学側はこうした状況をどう捉えるのか。「AIを使う」のは是か非か。AERA 2024年2月5日号より。

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「ES(エントリーシート)の作成にChatGPTを使っている学生は周りに結構いますよ。作文に頭を悩ませることなくあっという間にできるし、便利だと思います。私も使ってみたことはあります」

 そうあっけらかんと語るのは都内の私立大学に通う女性(22)だ。ChatGPTは自然で高度な文章が生成できる、対話型AIと呼ばれる人工知能のこと。ESはうんうん唸りながら文章をひねり出して、時間をかけて書くものという価値観は、過去の遺物なのか──。

 今春、大卒で社会に出る人たちは2000年以降に生まれた、いわゆるZ世代。テレビは倍速視聴、YouTubeはもっぱらショート動画、音楽ではイントロは飛ばすなど、時間対効果の「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視する世代といわれる。何かと新しい価値観が注目を集める世代だが、学生側が求める傾向は避けられない。

AERA 2024年2月5日号より

4人に1人がAI使用

 転職サービス「doda」が昨年6月に大学3、4年生を対象に行った調査では、4人に1人の学生が就活でChatGPTなどの生成AIサービスを使用したことがあると答えた。利用した場面は、企業の志望動機や自己PRの作成がほとんどだった。

 教育ジャーナリストの神戸悟さんはこう話す。

「かつてはESは手書きで提出するもので、イラストを入れる学生がいるなど工夫がありました。今はほとんどウェブで完結するので、違いが出しづらい。手書きの時代から代筆屋といった“ずるい”やり方があったように、AIを利用する学生が一定数いるということは理解できます。教育現場でもAIを用いて講義しているところもあるので、柔軟に対応しながらある程度は許容していかなければならないというのが実情ではないでしょうか」

 大学側はこうした状況をどう捉えるのか。都内の難関私立大学のキャリアセンターの担当者はこう話す。

「技術の進歩によってもたらされるものは多いので、一概にだめだというつもりはありません。ただ、AIを鵜呑みにして、情報の正確性を検証せずに丸々写し書きするというような無思慮な利用は慎むべきです。あくまでツールの一つとして活用するということであれば、何ら否定するものではないと考えていますし、活用できるのであれば積極的に使うべきだと思います」

 使えるものは何でも使うという姿勢は仕方ないという視点がある一方で、眉をひそめる大学関係者もいる。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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