レベルが上がり続ける女流棋界の中で、タイトルを取るのは容易なことではない。しかし磯谷祐維の目標は高い。さらに光を浴びる舞台への登場は、そう遠くないかもしれない(撮影/写真映像部・高野楓菜)

料理は洗い物が面倒で(笑)。いつもは近所のコンビニで買ったものを食べています」

 将棋にかける情熱は、新人女流の中でもひときわ熱い。

「対局は月に4日ぐらいです。お酒は好きなんですけど、対局の1週間前からは飲まないと決めています。いまは毎週対局があるので、ずっと飲めないんです(笑)」

「研究会は月に15日ぐらいです。奨励会有段者の方や、たまに棋士の先生にも教えてもらっています。女流棋士で唯一指すのは鈴木環那さん(女流三段)で、すごくお世話になっています。ここ2年ぐらいは詰将棋を解くのが楽しいです。解けなかったら苦しいんですけど(笑)」

 実戦で玉を詰ます能力がレーティング化される「詰めチャレ」では、磯谷のランクは「八段」を超えている。

 本取材の日はちょうど、磯谷の21回目の誕生日だった。

「知り合いの研究会仲間の奨励会員からメッセージで『誕生日おめでとう、詰将棋をあげる』って、詰将棋が送られてきました(笑)」

 島井咲緒里女流二段からは、誕生日プレゼントになにがいいかを尋ねられた。

「これ欲しいんです!」

 磯谷がリクエストしたのは、柏川香悦(かしかわこうえつ)氏の作品集『詰将棋半世紀』。知る人ぞ知る名著で、すでに入手が難しく、古書市場では7千円ぐらいの値がつけられている。島井はその願いに応えた。

「わーい!!」

 日本女子プロ将棋協会のYou Tubeチャンネルには、本をもらって心底喜ぶ磯谷の様子が映されている。(構成/ライター・松本博文)

AERA 2024年2月5日号

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