磯谷祐維(いそや・ゆい)/2003年1月15日生まれ。21歳。岐阜県各務原市出身。山崎隆之八段門下。23年、女流2級。24年、YAMADA女流チャレンジ杯に優勝し女流初段に昇段。好きな食べ物はしいたけ(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。35人目は、磯谷祐維女流初段です。AERA 2024年2月5日号に掲載したインタビューのテーマは「私のルーティン」。

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「ずっと苦しい将棋だったので、最後の最後に逆転できて。優勝できてうれしいです」

 2024年1月3日、群馬県高崎市で行われたYAMADA女流チャレンジ杯決勝戦。磯谷祐維は野原未蘭女流初段に劇的な逆転勝利を収めた。

「棋戦初優勝、そして女流初段昇段できとても嬉しく思います。勝つことでお世話になってる方に恩返しできたらと思います」

 磯谷はX(旧Twitter)で、そうつぶやいた。反響は大きかった?

「そうですね。みんな、ほめてくれました(笑)」

 磯谷の師匠は山崎隆之八段。山崎は独創的な序中盤と、追い込まれてからの驚異的な終盤力で知られている。

「終盤、非常に見事な追い込みというか。やっぱり師匠ゆずりの感じでしたね」

 決勝戦で解説を担当した佐藤康光九段はそう評していた。自分でもそう思う?

「確かに……。わるい将棋であやしい手を指して、あやしく持っていくのが、私は得意なんですかね(笑)」

 磯谷は23年9月に女流棋士になったばかりだが、主要な女流アマのタイトルをほとんど獲得し、その強さは早くから知られていた。最近では髪の色でも話題を集めている。

「金髪の記録係?」

 昨年9月、羽生善治九段の対局で記録係を務めたとき、そう驚く声も聞かれた。

「髪は確かにすごい注目されてるんですよ。常に変わってるのがデフォなんです(笑)。気分ですね、本当に。3日前にはピンクにしたんですけど、色落ちが早くて。次は青とかにしたいです」

 ヘアカラーは派手だが、毎日の生活はストイックだ。

「もやしだけで幸せになれるの、コスパいい」「朝1袋 昼2袋 夜2袋 1日にもやし5袋食べてしまった」

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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