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誰しも平等に訪れる老い。その老化には、失敗と同じようによいものと悪いものがあると話すのは、東京大学名誉教授で失敗学の提唱者・畑村洋太郎氏だ。畑村氏は、自ら「よい老い」を体感したという。畑村氏の新著『老いの失敗学 80歳からの人生をそれなりに楽しむ』(朝日新書)から、一部を抜粋・改編して紹介する。
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老いることで失われるもの、新たに得られるもの
失敗には、「よい失敗」と「悪い失敗」があります。そして、よい失敗はいたずらに忌み嫌わず、うまく付き合っていく一方で、悪い失敗はなるべく起こさないように努めるというのが失敗学の考え方です。
同じように老いにも、「よい老い」と「悪い老い」があるように思います。「よい老い方」「悪い老い方」といったほうがわかりやすいでしょう。それぞれの定義は、やはり失敗学の考え方が参考になりそうです。
失敗学におけるよい失敗は、人が成長する上で必ず経験しなければならない、必要な失敗です。こういうものは価値がありますが、数としてそれほど多くありません。世の中の多くの失敗は、経験する必要のない悪い失敗です。手抜き、インチキ、不注意、誤判断などから生じるものが典型例で、これらに加えて、自分にとって意味があるものでもまわりに与える悪影響が大きかったり、心身が大きく傷つけられたりするような、自分にとって致命傷になるような失敗なども、経験する必要のない、避けるべき悪い失敗としています。
この考え方を参考にすると、「よい老い方」と「悪い老い方」の中身がなんとなく見えてきます。歳を取ってからは人間的な成長より、豊かな人生や充実した毎日を送ることのほうが大事です。なのでよい老いは、それらにつながるものといえます。これは失敗の場合と違って、行為や行動より、心の持ち方、考え方などが重要ではないかと思います。