実写版「不死身の杉元」の表現
近年、人気マンガを原作とする作品のアニメ化と実写化には、「原作に忠実であれ」というファンからの要望が強く押し出される。しかし、アニメならではの描写、実写だからこそできる表現を何もかも無くしてしまうのは、良い選択肢であるとはいえない。原作の世界観を損なわずに、アダプテーションとして新たな魅力を付け加えていく必要があろう。
実写映画や舞台の場合には「その役者だからこそできる演技」が観客から期待される。山﨑賢人の場合はどうだったか。彼は目を見開いて「人を殺す冷徹さ」を表現する時よりも、自分の身にまとわりつく「死」の血なまぐささに、自嘲気味に眉をひそめる表情が巧みだった。「不死身の杉元」として生きざるを得ない男の、悲哀と狂気が垣間見えた。
戦場で「俺は生き抜いてやる」と言った杉元だったが、彼は何のために戦い、何のために生きようとするのか。「俺は不死身の杉元だッ!!」とくり返し叫んだ彼の願いは、本当に「不死身」であることだったのか。
コミックス版は完結しているが、『ゴールデンカムイ』のファンはまだ増え続けている。映画、アニメの中で新しく紡がれていく、生き残りをかけた金塊争奪戦の続編が、今後も期待できる。