パック技術の進化で
芸能界屈指のカレーマニアで、“音楽界のグルメ番長”、『旨い! 家(うち)カレー』(朝日新聞出版)などレシピ本も多数出版しているホフディランの小宮山雄飛さんはこう言う。
「スパイスというのは、どうしてもどんどん香りが失われていきます。レトルトパウチに入れて保存しなければならないという特性上、その独特の香りがうまく保存できないため、インドカレーなどよりも欧風カレー、日本のおうちカレーのようなもののほうが向いていたのですが、香りを保ったままパックする技術が上がったことで、スパイスが利いていて美味しいレトルトカレーが増えました。今はスパイスをルーに入れず別添してふりかけるようなスタイルで香りを再現するものも増えてきています。そういう技術の進化で、名店とコラボしたものも、極めてお店と近い味のものが増えた印象があって、なかなかお店に行く機会がないなというときにお試し感覚で気軽に味わえるというよさがあったり、とにかく使い勝手が変わったというところがあります」
小宮山さんは、近年のレトルトカレー人気は、味の進化以外にも、レンジ調理対応の進化によるところも大きいとみる。
「温めるだけでいいといっても、時には湯煎するだけでも面倒くさくなるときもある。レンジ調理も、別の容器に移しかえるという手間がありました。それが、多くのレトルトカレーが、パックごとレンジ対応になった。これがけっこう大きな革命だった気がします」
前出の一条さんによると、近年2回、レトルトカレーが大きく見直された時期があった。初めは11年の東日本大震災。保存食・非常食としてのもともとの存在が見直され、あらためて現在の商品の美味しさや味の幅の広さに注目が集まり、さらなる広がりのきっかけになった。その次がコロナ禍だ。
「おうち時間を楽しんで過ごさなければならないなか、家の中で温めるだけで相当美味しいものが食べられると、レトルトカレーに対する考え方が変わった気がします」
(ライター・太田サトル)
※AERA 2024年1月29日号より抜粋