胃がんは胃の上皮(粘膜)から発生する腫瘍で、「腺がん」という種類が90%以上を占めます。胃がんの進行度合いのおおよその目安として、①がんがどこまで深く到達しているか(深達度)、②がんの性質(分化度=悪性度)が用いられます。
▼がんの深達度
胃壁は内側から、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜と複数の層からなっています。粘膜と粘膜下層にとどまっているものが「早期胃がん」、筋層以上に達しているものが「進行胃がん」となります。
▼がんの分化度
「分化型」と呼ばれるものは、進行がゆっくりで転移しにくく、比較的“おとなしいがん”です。一方、「未分化型」と呼ばれるものは、がん細胞がまとまらず、ばらけるように発育するため、リンパ節に転移しやすく、治療が難しくなる“たちの悪いがん”です。若い世代に好発し、進行の速さで注目を集めた「スキルス胃がん」の多くは未分化型で、診断されたときにはすでに進行した状態で発見されることがほとんどです。
早期発見には胃内視鏡検査がベスト
早期のうちにがんをとらえるためには、胃がん検診を受けるのがいちばんです。
胃がん検診には、バリウムを飲んでX線撮影をおこなう「バリウム検査」と、「胃内視鏡検査(上部消化管内視鏡検査)」があります。
バリウム検査はまだしも、内視鏡検査を受けることに抵抗感や恐怖感を感じる人は多いようです。実際、厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」によると、過去1年間に胃がん検診を受けた人の割合は、40~69歳で男性48.0%、女性37.1%と低いものでした。
「医師の立場からは、やはり胃内視鏡検査をすすめたい」と言うのは、山梨大学病院消化器外科診療科長・教授の市川大輔医師です。
「内視鏡の画像は非常に鮮明で、がんの有無だけでなく、おおよその深達度や悪性度なども、直接目で見て診断することができます。早期発見を目的とした検診という観点からは、バリウム検査よりも胃内視鏡検査がすすめられます」
内視鏡をのみ込むときに「おえっ」とえずいてしまう「咽頭反射」を抑えるためのスプレーや、うとうとした状態で検査が受けられる鎮静薬の使用など、心理的・身体的な負担を軽減する方法もあります。まだ受けたことがない、あるいは一度受けたけれどつらくて、二度と受けたくないと思っている人は、検診時に医師に相談してみてください。