からだの負担の少ない治療は早期胃がんに適応

 胃がんの治療の基本は、がんを切除することです。

 かつては開腹手術が中心で、患者の心身の負担は大きいものでした。しかし現在では内視鏡による「内視鏡的切除」や、腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いた「腹腔鏡下胃切除術(以下、腹腔鏡手術)」が中心になり、より負担が少なく、心身への影響が小さい「低侵襲」な治療が可能になっています。早期胃がんで見つかれば、これらの治療法を選択できる可能性が高いのです。進行がんになると、基本的には開腹手術となりますが、最近では、進行がんの一部に対しても腹腔鏡手術が標準治療の一つとなり得ると考えられています。

胃がん予防の第一は、ピロリ菌の除菌治療

 冒頭に説明したように、胃がんの発症にはピロリ菌感染が大きく関与し、ピロリ菌に感染したことがない場合の胃がんの発症率は1%未満と考えられています。そのため、まずは自分がピロリ菌に感染しているかどうかを調べましょう。内科で申し出れば、簡単な検査でピロリ菌に感染しているか調べることができます。

 現時点で感染が陰性であれば、将来的に感染する可能性はほとんどないといえます。飲料水などの衛生状態がよくなったことで、若年層では感染率が低くなっており、50代の感染率が約40%であるのに比べて、20代では10%未満となっています。

 いま20代の人が胃がんの好発年齢になる30年後には、ピロリ菌が原因の胃がんはまれなものになっているかもしれません。

胃がん検診、ピロリ菌陰性でも定期的に受けよう

 検査の結果、ピロリ菌感染が陽性という結果が出たら、必ず除菌治療を受けましょう。薬を飲むだけなので、さほど苦しい治療ではありません。

 では、除菌治療を受けてピロリ菌感染がなくなったら、もう胃がん検診は受けなくていいでしょうか。もともとピロリ菌陰性の人には、胃がん検診は必要ないのでしょうか。

「そういうわけにはいかない」と、慶應義塾大学病院腫瘍センター教授の矢作直久医師は言います。

「ピロリ菌の除菌治療を受けた人は、胃の粘膜の萎縮が残っています。ですから胃がんのリスクがゼロになったわけではありません。年に1回の胃内視鏡検査がすすめられます。もともとピロリ菌陰性の人でも、3~5年に1回は胃がん検診を受けたほうがいいでしょう。というのも、ピロリ菌陰性の胃にラズベリーが生えたように発生する『ラズベリー型胃がん(腺窩上皮型がん)』という新しいタイプのがんが発見されているからです。今後、さらに新種の胃がんが登場してくる可能性もあります。胃がん検診は定期的に続けていってください」

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