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 胃内視鏡(胃カメラ)による内視鏡検診や、胃がんの原因となるピロリ菌の除菌治療の普及のおかげで、胃がんの患者数は減少傾向にあります。とはいえ、2019年に胃がんと診断された人は、男性約8万5000人、女性約3万9000人。がんの部位別の患者数の順位は、男性では第3位、女性では第4位で、いまだ注意が必要ながんといえます。胃がんは早期であれば完治の確率の高いがんです。早期発見のための検診頻度や予防についても解説します。

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 本記事は、2024年2月下旬に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。

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男女比は2対1。50代以上で患者が増加

 胃がんの患者数は50代から増え始め、80代でピークを迎えます。高齢者のがんという見方ができるかもしれません。男女比は2対1で男性に多くみられます。

 初期には自覚症状がないため、内視鏡やバリウム検査による胃がん検診で見つかるケースが多くなっています。胃炎や胃潰瘍を伴っていると、胃の痛み、胸やけ、食欲不振、げっぷなどの症状がみられることもあります。

 胃がんの原因として、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)に感染していること(ピロリ菌陽性)、喫煙、塩分の高い食事などが挙げられます。

 ピロリ菌は飲み水や食べ物を介して経口感染する細菌で、体内に取り込まれると胃粘膜をおおう粘液の中に生息します。多くは子どものころに感染し、40代50代になってから胃潰瘍や胃がんの発症リスクが顕在化してきます。

 ピロリ菌陽性の人は陰性の人に比べて、胃がんリスクが約5倍になるとされ、現在ではピロリ菌が陽性の場合、除菌治療をおこなって胃がんのリスクを下げることが、胃がん予防の重要な柱になっています。

早期は治癒率が高く、からだの負担が小さい治療を選べる

 胃がんの5年相対生存率は66.6%。リンパ節転移や遠隔転移(ほかの臓器に転移すること)のない、早期に発見されたものは96.7%と極めて高い一方、遠隔転移がある進行例では6.6%と非常に低くなっています(国立がん研究センターがん統計から)。この数字をみても、「早期胃がん」のあいだに治療を開始することが、なにより重要であることがわかるでしょう。

 では、「早期胃がん」とはどんな状態を指すのでしょうか。

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がんの「深さ」と「悪性度」で早期かどうかを判断する