アルコールハラスメント(アルハラ)という言葉が浸透したのはいつごろだろうか。実はそんな言葉とは無縁と思われていたプロ野球の世界でも変化しているという。功労者はあの大谷翔平だ。徹底した自己管理が最高のパフォーマンスを生んでいることが、他の選手にも影響を与えているようだ。
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プロ野球の世界は、基本、若手はチームの主力選手から酒の誘いが来たら断れない。昔であればなおさらその傾向は強く、まばゆい才能を持ってプロ野球の世界に入ったが、連日のように深酒を繰り返したことで本来のパフォーマンスを発揮できず、短命に終わった選手が少なくなかった。数十年前は未成年の選手の飲酒も確認されていた。
セ・リーグの球団OBはこう振り返る。
「昭和の時代は朝まで酒を飲んでね、翌日に上着を着こんでランニングで大量の汗を流して『アルコールを抜く』ことで体のキレを取り戻すと言われていました。酒が残っている状態でランニングは心臓に負担が掛かって危険だし、アルコールなんて抜けない。脱水症状になるし今だったら考えられないけど、当時は先輩たちがしていたから何の疑いもせずまねしていました。地元に顔が利くタニマチが選手を連れて飲み歩くことが多かったですね」
期待の高卒ドラ1が毎晩連れ回され……
さらには、こんなこともあったという。
「地元出身で高卒のドラフト1位の選手が入団したんです。長距離砲としての素質は目を見張るものがあって絶対に強打者になると思ったけど、毎晩、繁華街を連れ回されてアルコール中毒になってね。伸び悩んで数年後に他球団にトレードされたけどもったいなかった。高校を出て右も左もわからないなかで酒に人生を翻弄(ほんろう)されて……。彼もアルハラの犠牲者だと思う」
昭和から平成と歴史を重ねると、科学的トレーニングが導入され、深酒が身体に与えるダメージが問題視されるようになる。それでも大きな重圧を抱えてプレーするなか、ストレスを解消する意味でも朝まで酒を飲む選手が一定数いた。