プロ野球・阪神タイガース 原口文仁選手(撮影/伊ケ崎 忍)

 2023年、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガース。右の代打の切り札として、精神的支柱としてチームに貢献した原口文仁選手(31歳)は、24年1月、大腸がん術後5年の節目を迎えました。1月23日には、自身のⅩ(旧ツイッター)を更新し、最後の診察を終え、大腸がんが「完治」したと告げられたことを明かしました。2月26日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2024』でインタビューした内容を先行して公開します。

【写真】大腸がん手術翌日の原口文仁選手の様子(2019年)はこちら

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「リーグ優勝は18年ぶり。日本一なら38年ぶり。それだけタイガースの歴史のなかでもすごいことをチームが成し遂げたという達成感がありますし、その一員になれてすごく、もう幸せな気分ですね」

 取材は優勝の余韻冷めやらぬ11月中旬。原口選手が大腸がんの手術を受けてから、まもなく丸5年が経つ。

 「5年生存率」という言葉があるように、この間の検査で異常が見つからなければ再発の可能性は低いと判断される、「治った」とみなせる区切りの年だ。ここまでの検査はオールクリア。現在はそれでも、がんが発覚した当初は野球を続けられるのかどうか、全く見通しも立たない状況だった。

26歳、まさかのがん告知 いかに野球を続けるか

 17年夏ごろから下血などの不調があらわれはじめ、18年12月に人間ドックを受診。再検査となった1月8日、大腸カメラ検査の場で医師から大腸がんを告げられた。26歳という若さ、まさかの告知だった。

「がんだとわかって、家族のことや将来のことをすごく、すごく考えて、不安で。でも告知を受けたその場で、先生が『手術までの間、野球をやってもいいですよ』と言ってくださったんです。先の見えない暗闇のなかにいるようでしたが、野球をできる環境と家族のおかげで徐々に前向きになれました」

 病理検査の結果、ステージⅢbと判明。リンパ節への転移がみとめられる、進行したがんだった。

「できるだけ早く手術する必要があると。おそらく大丈夫だけれども、人工肛門になる可能性もゼロではないとの説明も受けました。先生は、それでもとにかく野球を続けたいという僕の気持ちに寄り添って治療法を提案してくださいました」

 1月26日に手術。原口選手が受けた腹腔鏡手術は開腹手術に比べて傷が小さく、術後の安静期間も短い。術後の抗がん剤治療も、自宅で服用できて練習と両立しやすい錠剤タイプの抗がん剤を選んだ。

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DHがある交流戦が復帰のチャンス