7月16日、自衛隊法改正案、武力攻撃事態法改正案など、いわゆる「安保法案」が衆議院を通過しました。今後、参院での審議となり、もしそこで否決されたとしても、あるいは採決がされないまま60日を越えたとしても、再び衆院に戻されて3分の2以上が賛成すれば法案は成立します。
しかし、共同通信の世論調査(7月17・18日実施)によると、政権が国民に対し法案を「十分に説明しているとは思わない」と82.9%の人が答えており、「十分に説明していると思う」と答えた人の13.1%を大きく上回る結果となっているほか、各種世論調査でも軒並み「反対」の声が大多数となっている状況です。また、衆院通過以降、日本全国で安保法案に反対する集会やデモが展開されています。
この先、広島・長崎の原爆忌や戦後70周年を迎える終戦記念日などの節目がやってきますが、今年は例年以上に戦争や平和について論じられる機会が多くなるのではないでしょうか。
平和とは何か? 人はなぜ戦争を起こしてしまうのか?
古くから数多の人が考えてきたことではありますが、こうした問いに「平和というのは、すべての敵意が終わった状態をさしている」と述べるのが、イマヌエル・カント。「批判哲学」を展開し近世哲学に大きな影響を与えたドイツの哲学者、思想家です。
そのカントの名著『永遠平和のために』が、集英社から復刻版として再出版。同書は1795年にカントによって著された政治哲学の著作で、一切の戦争の契機が存在しない状態、戦争が絶対に生じない「永遠平和状態」はどのようにして作ることができるか、をテーマにした一冊です。
哲学の本というと難しい、あるいは、手に取る前に「読めない!」と感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、本書は、前半部に平和に関するカントの言葉とともにカラー写真を大きく掲載。帯には「16歳からの平和論」と書かれていますが、哲学書が苦手な人でもまずは前半を読めば、カントの言わんとすることの要点が掴めそうです。
たとえば、28ページには次のような言葉が記されています。
「戦争それ自体は、とりたてて特殊な動因を必要としない。名誉心に鼓舞されて戦争は起きる」
「国連」や「憲法第9条」の理念にもなっているカントの平和へのメッセージ。戦後70周年を迎える今年の夏、是非、お手にとってみてはいかがでしょうか。