震度7。真冬の能登半島を巨大地震が襲った。いつかは「起きる」と考えていても、事前の対策は極めて難しい。日常を見つめ直して、備えを。AERA 2024年1月22日号より。
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倒壊したのは、7階建てのビルだった。
元日の夕方、石川県能登半島を襲った最大震度7の巨大地震。揺れは広範囲に及び、輪島市中心部にあった伝統工芸「輪島塗」の老舗の会社のビルが倒壊した。ビルは根元から横倒しになり、隣の居酒屋兼住宅を押しつぶし、周囲の信号機もなぎ倒した。
なぜ、7階建てのビルが倒壊したのか。耐震基準をクリアしていたのか。揺れで杭が破断した可能性も指摘されるが、輪島市の担当者は、繰り返した。
「現時点ではわかりかねます」
「耐震基準」という概念は、1950年に制定された建築基準法に盛り込まれた。その後、大地震のたびに改正を重ねた。78年、ブロック塀などが倒れ28人が犠牲となった宮城県沖地震(最大震度5)を受け81年、建築基準法が改正され耐震基準が引き上げられた。それ以前を「旧耐震基準」、それ以降を「新耐震基準」と呼び、「震度6強~7程度の地震でも倒壊しない水準」が求められる。その後、95年の阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことから2000年にも法改正され、木造住宅について地盤調査や基礎強化などを盛り込んだ「2000年基準」が設けられた。
「耐震化率」が低い地域
国土交通省が公表している「大規模建築物の都道府県別耐震化率」(22年)によると、旧耐震基準で建てられた病院や店舗、学校、宿泊施設など不特定多数の人が利用する大規模建築物が調査の対象だが、石川県は75%と、全国平均90.1%を大きく下回る。
防災コンサルタント事業を行う「防災クリエイティブマネージメント」(大阪府大阪狭山市)の防災アドバイザー・岡本裕紀子さんは、輪島市で倒壊したビルは詳しい調査が必要だとした上で「企業が所有する大規模建物の耐震化は、その企業がしっかり防災意識を持ち日頃から建物を維持管理しているかにかかっている」と指摘し、こう話す。