被害が大きかった珠洲市や輪島市、かほく市などは、いまだ住宅被害の全容が把握できていない=4日、石川県珠洲市

「企業には、いざという時に自社の早期復旧に取り組むのみならず、自社の強みを生かした社会貢献活動を求められる時代が到来しています。『地域の一員としての企業』という視点を持って、建物の維持管理をはじめ、防災活動に取り組んでほしい」

 今回の地震は、石川県内の犠牲者は232人、安否不明者は21人となる未曽有の災害となった(18日14時時点)。ここまで被害が拡大した要因の一つが、住宅の耐震化の遅れだ。

 多数の木造住宅が倒れ「壊滅的な状態」とまで言われる珠洲市は、住宅約6千戸のうち耐震基準を満たしていたのは51%(18年)、80人以上が亡くなった輪島市は46.1%(22年)と、いずれも全国平均の約87%(18年)と比べ極めて低い。

 さらに被害を大きくしたと考えられているのが、高い高齢化率だ。特に地方は高齢化が進み、65歳以上の高齢化率は珠洲市が52.8%(22年)、輪島市で45.7%(21年)と全国平均の29.1%(22年)を大きく上回る。災害時には、高齢者ら「災害弱者」が逃げ遅れ自宅で亡くなるケースは少なくない。今回も、逃げ遅れた高齢者は多かったと見られている。

命救うための耐震改修

 耐震化が進まないのはなぜか。

 耐震関係に詳しい東海大学・静岡県立大学の長尾年恭(としやす)客員教授は、「経済的理由が一番大きい」と指摘する。

「耐震化の必要性はわかっていても、耐震化による効果は目に見えません。例えば、耐震化に100万円を使うなら、車を買ったほうがいいと思ってしまう。車は買ったその日から、役に立ちます。高齢者が多い過疎地ほど、もう必要ないと思い、耐震改修は進みません」

 だが、「命を救うためには耐震化が最重要」と長尾客員教授。

「家が壊れないことで、火事が起きず、命が助かり、被災後の暮らしにも困りません。また、耐震化して高断熱住宅にすると、ヒートショックなどによる冬の死亡増加率が低くなることも分かっています」

 耐震化に詳しい東京都立大学の中林一樹(いつき)名誉教授(都市防災学)も、木造住宅の耐震化の必要性を強調する。

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