イラスト:サヲリブラウン

 同じような人は、少なからずいらっしゃるでしょう。目前のやるべきことをやるしかないとわかっていても、己の無力や弱さに打ちひしがれてしまう方々が。

 1月は2日からラジオの生放送がありました。例年は日枝神社から私が中継を行いますが、今年は取りやめ、リスナーからのメールをたくさん読み、あとは普段と同じ放送を心掛けました。

 1月1日の深夜に番組に届いたメールには、石川県珠洲市で被災されたリスナーからのものもあり、避難所で恐怖に怯える様子が記されていました。それも読みました。その後、どうされているかがずっと気がかりです。

 新年初週の生放送を終え、どんなに逆立ちしたって、いまの私には「いつも通り」をやり続けることしかできないと痛感しました。

 募金する。復興したら観光に行く。それまでは、いつも通りを踏ん張るしかない。

 中途半端に前向きなことは書かないでおきます。とにかく、いまは踏ん張ろう。自分の持ち場で最善を尽くそう。つらい時は、暫しニュースから離れて休もう。防災袋や避難経路のチェックも忘れずに。一日一日、夜を乗り越えていくしか手はないのだから。

AERA 2024年1月22日号

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ジェーン・スー

ジェーン・スー

(コラムニスト・ラジオパーソナリティ) 1973年東京生まれの日本人。 2021年に『生きるとか死ぬとか父親とか』が、テレビ東京系列で連続ドラマ化され話題に(主演:吉田羊・國村隼/脚本:井土紀州)。 2023年8月現在、毎日新聞やAERA、婦人公論などで数多くの連載を持つ。

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