東京・羽田空港の滑走路で1月2日、海上保安庁の航空機と日本航空(JAL)の旅客機が衝突し炎上した。いくつものヒューマンエラーが重なった結果の事故であることが明らかになりつつあるが、どうすれば再発を防げるのか。AERA 2024年1月22日号より。
【写真】事故から一夜明けた日航機は主翼と尾翼の一部を残して焼け落ちていた
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「ひとつのヒューマンエラーでは事故は起きない。今回のように二重、三重にヒューマンエラーが重なった結果、事故が起きる。その事実を調査・検証し、エラーの連鎖をどこで止めるのかという視点で再発防止策を講じる必要がある」
と指摘するのは、運輸事故対策に詳しい日本大学危機管理学部の福田充教授だ。
国土交通省は事故後、滑走路への誤進入を防ぐためのモニターを常時監視する管制官を新たに配置したり、パイロットと管制官に対する注意喚起システムの強化などを検討したりといった対応に追われていたが12日、外部の有識者らによる事故対策検討委員会を設置。事故の再発防止策をまとめるための委員会であり、事故の調査と原因究明と並行して管制システムの見直しなどをするという。
調査にあたる国交省の外局である運輸安全委員会は、両機からボイスレコーダーとフライトレコーダーを回収。交信記録を解析するとともに、JAL機のパイロットと客室乗務員のほか、管制官からの聞き取りも進めている。同時に「捜査」も動き出している。
警視庁は事故翌日の3日、業務上過失致死傷容疑で現場検証を実施。同日、業過致死事件としては異例の特別捜査本部を東京空港署に設置し、関係者への事情聴取を始めている。
航空管制官として中部国際空港や那覇空港で計17年間働いてきた田中秀和さんは、
「自分の証言が裁判で使われ、自分や同僚が罪に問われる可能性があるため、正確な証言が得られない可能性があり、それでは再発防止につながらない」
と懸念を口にする。日大の福田教授も、
「『捜査』は責任を追及するためのものであり、関係者が自己保身に走れば、真実に到達しない可能性がある。大切なのは、専門家が、何があったのかをきちんと『調査』することです」
と強調し、こう続ける。
「災害支援も担う飛行機は、重要なライフラインのひとつです。事故の調査を尽くし、場当たり的な対策ではなく、鉄道や船など全ての運輸を網羅する総合的な危機管理について考える時かもしれません」
能登半島地震の翌日に起きた航空機事故の最大の教訓となるだろう。(編集部・古田真梨子)
※AERA 2024年1月22日号より抜粋