健康な成人の脈拍数は、1分間に60~100回。運動時や緊張しているとき、お酒を飲んだときなどに脈が速くなるのは生理的な現象ですが、なんらかの原因があって、脈が遅くなったり(徐脈)、速くなったり(頻脈)するのが「不整脈」です。治療をせずに経過観察をおこなうだけで心配のない不整脈もありますが、なかには心臓の機能がいちじるしく低下する「心不全」や、「突然死」につながる不整脈もあります。不整脈をどのように見つけて改善すればいいでしょうか。この記事では、頻脈を中心に説明します。

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 本記事は、2024年2月26日に発売予定の『手術数でわかる いい病院2024』で取材した医師の協力のもと作成し、先行してお届けします。

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脈拍は遅すぎても速すぎても問題

 不整脈には、脈拍が遅くなる「徐脈」と、速くなる「頻脈」があります。

 脈拍が1分間に50回未満のものが徐脈で、息切れ、倦怠感、足のむくみなどがあらわれ、意識を失う「失神」が起きることもあります。

 一方、脈拍が1分間に100回を超えるものが頻脈で、動悸、息切れなどがみられ、徐脈と同様に失神を起こすこともあります。

 そのほか、脈が不規則に飛ぶ「期外収縮」と呼ばれる不整脈もあります。加齢や体質的な原因から起こるものが多く、無症状のこともありますが、のどがつまった感じや胸の不快感、動悸などがあらわれることもあります。

 日ごろから自分の安静時の脈拍数を把握しておくことが、不整脈の早期発見には必要です。症状が続くようなら医師の診断を受けて、治療が必要か確認しておきましょう。

 頻脈では、心臓にどのようなことが起きているのでしょうか。

 心臓は四つの部屋に分かれています。右上に右心房、その下が右心室、左上が左心房、その下が左心室です。頻脈性不整脈が起きている場所によって、「心室頻拍」「心室細動」「心房細動」「心房頻拍」などの名前が付けられています。「細動」は細かくけいれんする様子を表しています。「頻拍」は細動よりもけいれんの程度は低いです。

「心房細動」では心房が1分間に300~400回の割合で細かく震え、けいれんしたような状態となり、心房から血液をうまく送り出せなくなります。そのため、心房内には血液がとどこおり、血栓(けっせん、血のかたまり)を形成することもあります。また、脳への血流も低下して、失神をきたすこともあります。

 一方、「心室細動」では心室が1分間に300~400回の割合で細かく震えるため、心室のポンプ機能は急速に失われて脳や全身に血液が送られない状態となり、失神・突然死をきたします。

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「助けを呼ぶひまもない」ほど急に失神する「致死性不整脈」