「ブギウギ」NHK総合の初回放送は毎週月曜~土曜の8:00から。(C)NHK

 その3カ月後、日帝劇場でコンサートが再開され、茨田もスズ子も出演した。楽屋でスズ子に「よくぞご無事で」と言われた茨田は、自分の話をした。

「慰問先でね、特攻隊員さんに歌ったの」と。年端もいかない子たちに「晴れ晴れといけます」などと言われた、その声が耳から離れない、私の歌に背中を押されて死んでいったかもしれないと続け、こう言った。

「悔しかったわ。だって歌は人を生かすために歌うものでしょ。戦争なんて、くそくらえよ」

 スズ子はこう返した。「ほんなら、これからはワテらの歌で生かせな。今がどん底やったら、あとはよーなるだけですもんね。歌えば歌うだけ、みんな元気になるはずや」。

 鏡を見ていた茨田が振り返り、スズ子を見つめた。スズ子は茨田とは違う強さがある。ここから茨田の「別れのブルース」になった。初のフルコーラスだった。泣けた。

 このシーンが放映された翌日の2024年1月12日、「あさイチ」のゲストとして菊池さんが出演した。待ってました!とばかり見たら、茨田のモデルである淡谷のり子さんの話題がたくさん出た。NHKだけど、淡谷さんが出演した「徹子の部屋」(テレビ朝日)が流れた。 

 淡谷さんは特攻隊員の前で歌った体験を語り、彼らの平均年齢が16歳だと繰り返していた。まだ若い黒柳徹子さんが、泣いていた。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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