社会の良心を背負い被災地へ
令和の天皇陛下と皇后雅子さまも、平成の時代から被災地や戦争の傷の残る土地を頻繁に訪れ、人びとの悲しみや復興に立ち上がる姿を歌に詠み込んできた。
97年の歌会始では、皇太子妃だった雅子さまは、阪神淡路大震災の被災地で強く生きる人びとの姿を詠んだ。
<大地震のかなしみ耐へて立ちなほりはげむ人らの姿あかるし>
令和に入り、皇后となった雅子さまは2020年の歌会始で、台風や豪雨の被害を受けた東北や九州の被災地でボランティアにはげむ若い世代の希望を和歌にした。
<災ひより立ち上がらむとする人に若きらの力希望もたらす>
天皇陛下が21年の歌会始で詠んだ歌は、新型コロナによる困難を乗り越えようとする人たちの努力と願いが実現することを願ったものだった。
<人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る>
「皇室は社会の良心や善意、国の意思を背負って被災地を訪ね続ける存在」
元宮内庁の幹部は、皇室をそう表現した。
歌人の岡野さんは、天皇の和歌とは「世の中が、こうありますように」との願いを神に伝え、国民と心を通わせる特別な言葉なのだとも話していた。
これからも両陛下は、災害で傷ついた人びとのもとを訪ね、犠牲になった人たちに祈りを捧げ続ける。
(AERA dot.編集部・永井貴子)