著者は芸能人に関する記事を得意とするライター。前作『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか』に続く第2弾は、内村光良(ウッチャンナンチャン)を中心に、出川哲朗、笑福亭鶴瓶、タモリ、中居正広(SMAP)、早見あかり(元・ももいろクローバー)、博多華丸・大吉、レイザーラモン、キャイ~ンといった人気者たちの半生を追う、バラエティに富んだ構成となっている。
 雑誌でのインタビュー等、一般人でも入手できる資料だけを使って取材対象者の人となりを浮かび上がらせる「テレビっ子」目線の原稿には、独特の手触りがある。「一度もメディアで明かされていないような“裏話”や“新証言”が出てくることは一切ありません。(中略)けれど、その情報の積み重ねと並べ方で“新証言”に勝るとも劣らない“発見”ができるのではないかと僕は思っています」……テレビっ子の魂を忘れず、しかしライターとして決めるところは決めるのが彼のやり方。その手腕に感動した、と書くと凡庸だが、わたしは本書を読んで本当に感動して泣いた。タイトルにも帯にも「泣ける」なんて書いてなかったのに!
 なぜ泣けるのか。それは「人間の心理」が描かれているからだ。漫才師の相方に対する複雑な心情や、グループ脱退を決めたアイドルの胸の内が、濃密に描き出されている。マニアックな情報の羅列でもなければ、単なる芸能ゴシップでもないこの感じは、唯一無二。「泣ける」と銘打っている本よりも、よほど泣ける。キャイ~ンの天野ひろゆきにラジオ番組のオファーが来た際、コンビでの出演を固辞したウド鈴木の言葉はとくに泣けてしょうがなかったし、ふたりのことが大好きになった。
「テレビがつまらなくなった」などと言われるが、本書のような「テレビの見方と語り方」があることを知れば状況は大きく変わるのではないか。本書はその可能性を感じさせてやまない。

週刊朝日 2015年8月7日号