111の活火山がある「火山大国」の日本で、大規模な噴火が発生して甚大な被害が出ると懸念されている一つが、富士山だ。溶岩流や大量の降灰によって、関東圏の広範囲で交通網の遮断、停電などの生活インフラの麻痺が起きるとされている。そして、そんな被害が、さらに大きな被害の「引き金」になりかねないと懸念されているのが、富士山から100キロほどにある浜岡原発(静岡県)だ。電力供給の停止、「山体崩壊」や地震による津波によって核燃料を冷却できなくなれば、どうなるのか。火山のリスクは、本当に「小さい」と言えるのか――。
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国内外で、火山の大規模な噴火を伝えるニュースが相次いでいる。
昨年12月3日にはインドネシア・スマトラ島で、18日にはアイスランドでも大規模な噴火が起きた。
国内でも、伊豆・小笠原諸島で相次いで火山活動が観測されている。10月9日に伊豆諸島の鳥島付近で地震があり、千葉県から鹿児島県までの広い範囲で最大60センチの津波が到達したのは、海底での火山活動が原因とも考えられている。
そして、「いつ大規模な噴火が起きてもおかしくない」とされる山が、富士山だ。
富士山が大規模に噴火した場合、風向きにもよるが、首都圏は降灰によって甚大なダメージを受けるとされている。内閣府中央防災会議によると、降灰量は東京・新宿区付近で10センチ弱。千葉・成田市では3センチ、横浜市でも2センチほどと試算されている。
火山灰は積もった後、雪のように自然と消えることはない。そして一般的な「灰」と異なり、細かく砕かれたガラスのかけらだ。少量でも大きな被害をもたらしうる。
たとえば鉄道は、わずかな量の火山灰で車輪やレールの通電不良が起こり、運行ができなくなる。自動車もエンジンのフィルターに詰まれば走行不能になる。電線に降り積もったうえに雨が降ると、漏電して停電するおそれもある。上下水道が詰まる可能性も指摘されている。
富士山の噴火による被害総額は、2004年の内閣府の試算では2兆5千億円。しかし、100兆~200兆円になると指摘する専門家もいる。
そして「万が一」の被害が懸念される施設の一つが、国内の原発の中でも富士山に最も近い場所にある中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)だ。