火山灰が積もれば、原発の発電設備、送電網に大きなダメージを与える可能性がある。
たとえば送電用の架線が積もった灰で切れたり、非常用ディーゼル発電機の中に灰が入って動かなくなったりして電気の供給が止まれば、2011年3月の東日本大震災で東京電力福島第一原発が「ステーション・ブラックアウト(全電源喪失)」したように、原子炉内や燃料貯蔵プールの核燃料を冷却できなくなってしまう。
では浜岡原発は、降灰に対してどんな対策をしているのか。
中部電力に取材を申し込んだが、「現在、国の審査の中で説明しているところであり、現時点で取材をお受けしても、お答えできないことが大半」との回答だった。
ただ、まずは電源や冷却水の供給が停止しないようにすればいいので、
「降灰だけなら対策はしやすい」
と高橋さんは話す。
しかし、過去には南海トラフ巨大地震とともに富士山が連動して噴火した例がある。地震による被害も合わせて想定しておく必要がある。
富士山が崩壊して発生した津波
そして専門家が、降灰以外に大きなリスクとして挙げているのが、富士山の「山体崩壊」だ。
山体崩壊とは、地震や噴火によって大規模に山が崩壊することだ。国内での大規模な例としては、1792年の島原・雲仙(眉山)、1888年の磐梯山などが知られている。土石流や岩屑(がんせつ)なだれが発生し、広域に大きな被害をもたらす。
富士山では2900年前に「御殿場岩屑なだれ」を起こしている。崩れた土砂の量は宝永噴火を上回る1.8立方キロメートル。最終的には相模湾や駿河湾にまで到達したとされる。シミュレーションでは被災人口は40万人に上るという指摘がある。
気象庁の気象研究所は、富士山の南側が山体崩壊し、駿河湾に流入したという想定でシミュレーションをしている。崩壊した量が1.4立方キロメートルで、秒速20メートルで駿河湾に流れ込んだ場合は、最大で5メートルを超える津波が発生。さらに速い秒速100メートルで試算すると、津波は最大で23メートルにもなるという。