慢性肝炎や肝硬変の代表的な原因としてC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスなどウイルスによるもの、アルコールによるもの、非アルコール性脂肪性肝炎(以下、NASH)、自己免疫性肝炎などがあります。

 C型肝炎ウイルスは輸血や血液製剤、入れ墨によって感染します。B型肝炎ウイルスも似たルートで感染しますが、日本では出産時に血液によって母親から感染(母子感染)したケースが多いです。

生活習慣病による脂肪肝から肝がんに

 前出の長谷川医師によれば、30年ほど前までは、肝がんの原因の約70%はC型肝炎ウイルスによるものでしたが、その後、感染者が減り、現在、C型肝炎ウイルスに起因する肝がんも減っています。

「その一方でウイルスとは関係のない病気が原因で起こる肝がんが増えています。その代表がNASHという、アルコールを飲まない、あるいは飲んでも1合程度の人に起こる肝炎によるものです」(長谷川医師)

 NASHの原因となるのは、肥満や生活習慣病を背景に起こる脂肪肝です。この脂肪肝は、非アルコール性脂肪性肝疾患(以下、NAFLD)と呼ばれています。かつては良性の病気とされていた脂肪肝ですが、NAFLDの約10%がNASHに移行することがわかってきました。

 脂肪肝から肝炎になる理由は明らかではありません。脂肪が過剰に蓄積されることで、肝細胞が障害されることが原因ではないかといわれています。また、NASHから肝硬変への進行スピードは、アルコールによるものより早いともいわれています。日本では肥満や生活習慣病の増加から、NAFLDが今後、さらに増えると予測されており、注意する必要があります。

「2型糖尿病はとくにNASHのリスクが高い印象があります。当科に紹介となった肝機能異常をともなう2型糖尿病の患者さんを調べた結果、約6割にNASHが認められたのです。糖尿病があると肝がんのリスクが3倍高くなることも知られています」(黒田医師)

 また、急激なダイエットにより、肝細胞が栄養不足になることでNASHが発症することもあります。

「野菜しか食べないような過度なダイエットをおこなった若い女性にNASHが発症したケースも、経験しています」(同)

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