肝炎の早期発見には採血によって測定する肝機能検査が役立ちます。肝機能検査の項目にはAST(GOTともいう)、ALT(GPTともいう)、γ-GTPなどがありますが、「大事なのはASTとALTで、とくにALTがポイント」と両医師は言います。
AST、ALTはどちらも肝臓の細胞で作られる酵素です。肝炎や肝硬変により肝臓に障害が起こって細胞が壊れると血液に酵素が流れ出て、濃度が上昇します。基準値はいずれも30 IU/L以下です。
ALTは職場健診や地方自治体の特定健診で、チェックできます。日本肝臓学会では生活習慣に起因する肝がんが増えていることから、23年6月に奈良県でおこなわれた日本肝臓学会総会で医療者や国民へのメッセージとして、「Stop CLD(慢性肝臓病)ALT over 30」を発表しました。
肝がん予防のために「ALTが30以上になったら、かかりつけ医を受診すること」を推奨しています。
黒田医師によれば、「数は少ないですが、ALTが30台の人からも肝炎が見つかることが報告されています。基準値を大きく超えていないから大丈夫と軽視しないほうがいいということです」
ALTの異常を指摘された場合は、かかりつけ医で肝炎ウイルスが陽性かどうかや脂肪肝の有無などを調べることをすすめます。
「必ずやっていただきたいのは、超音波エコーで肝臓の状態をチェックすることです。さらにそこで肝炎が見つかったら、すみやかに適切な治療を受けること。これが肝がんから身を守ることにつながります」(長谷川医師)
C型慢性肝炎などウイルス性の肝炎については、抗ウイルス薬などの治療薬があります。ウイルスを駆除できれば、肝がんの発症を抑えることができる可能性が高くなります。
「NASHについては体重を落とすほか、生活習慣病をコントロールして、肝炎を進ませないことが大事です。NASHについては治療薬がないことが課題でしたが、現在、世界的に治療薬の開発がおこなわれており、効果や安全性の調査について実施されているものもあります。日本でも近い将来、開発・調査中の薬が承認される可能性はあると思います」(黒田医師)