サルコペニアが進行すると筋肉や骨、関節が弱り、「立つ・座る」などの日常動作が難しくなる「ロコモティブシンドローム」につながる。転倒しやすくなり、骨も折れやすくなり……。
厚生労働省は「たんぱく質の摂取不足が最も直接的に強い影響を及ぼし得る疾患」として、前述のサルコペニアに加え「フレイル」を挙げている(「日本人の食事摂取基準〈2020年版〉」、以下同)。フレイルは加齢により身体能力が低下し、健康障害を引き起こした状態。
そこまでつらいことにならずとも、たんぱく質の不足は皮膚のたるみ、肌荒れ、髪のツヤ喪失、薄毛などにつながる。要するに“老けて見える”わけだ。
「老け見え」を防ぐ
「逆にいえば、たんぱく質をとることで筋肉、血管、内臓、肌、髪、爪などあらゆる部位に好影響をもたらすわけです。健康維持のため、減量中でも意識してたんぱく質をとりましょう」
藤田さんは、たんぱく質をとると消費カロリーが増える(痩せやすくなる)データも見せてくれた。ここで重要なのが「DIT(Diet Induced Thermogenesis=食事誘発性熱産生)」だ。
DITとは、食後に体が消化・吸収・代謝する過程で熱が発生すること。モノを食べると体があたたかくなるのはDITの作用によるものだ。
「たんぱく質の場合、摂取エネルギーの約30%がDITで消費されます。糖質のDITは6%、脂質は4%。つまりたんぱく質の熱効率は糖質の5倍、脂質の7.5倍もあるわけです」
だからといってたんぱく質だけを重視し、糖質や脂質をまったくとらないのはダメ。
「筋肉の維持に糖質や脂質も必要です。体重を健康的に減らしたいならたんぱく質は意識して多くとる。糖質や脂質は通常より控えめに。これが一番いい」
ダイエットが必要ない人も、健康と若さ維持のためたんぱく質はたっぷり摂取してほしい。
たんぱく質の目標量
さて「たっぷり」とはどのくらい? 厚労省は、1日に必要なたんぱく質に関して「推定平均必要量」「推奨量」「目標量」という基準を公表している。
「推定平均必要量および推奨量は『最低限必要なたんぱく質量』で、目標量は『生活習慣病予防を見据えた理想的な摂取量』ととらえてください。目標量の下限値は、2015年基準で全体の13%がたんぱく質になるように記されていました。これが20年版では50歳以上で14%、65歳以上で15%にアップ。たった1~2%と思うかもしれませんが、実際にたんぱく質をとる量で考えると大きな変化です」