AERA 2024年1月1ー8日合併号より

無力感を覚えて苦しい

 一時保護は原則2カ月を超えてはならないとされているが、未就学の里子も1年以上、保護所と複数の里親宅を行ったり来たり、宙ぶらりんのままだ。

 これではまるで、一時保護所は保護した子どもの“物流センター”ではないか。しかも、この“物流”に子どもの意見は一切、反映されない。

「一時保護所から里親宅に行くというのは当日の朝、言い渡されるそうです。その後、ここに戻ってくるのかどうかも本人もわからない」(里親の女性)

 前出の新井さんは、こう語る。

「処遇が大人に決められることも、せっかく虐待から逃げられても結局、自分には自分のことを決める権利はない、親のところにいた時と同じだと無力感を覚える苦しい時間となります」

「保護」とはいえ、自由を奪われ、私物すら使えず、明日どうなるかわからない状態で長期間、厳しい管理下に置くことは明らかに、子どもの福祉に反する。

AERA 2024年1月1ー8日合併号より

 女性は今、里子を預かることはしていないものの、一時保護所への疑問は消えない。

 前出の山野さんも、「施設入所や里親委託に同意しない親がいて、一時保護所での保護が長期化しますが、ならば、より普通の暮らしを保障しないといけない」と現状に異を唱える。

 一時保護所は今、大きな転換点にある。「改正児童福祉法」が2024年4月に施行、一時保護所の設備・運営に初めて基準が策定されるのだ。こども家庭庁虐待防止対策課の担当者は、今後、「子どもの権利擁護や個別的なケアを推進するための職員配置基準等、一時保護所の環境改善を図り、一人一人の子どもの状況に応じた支援を確保できるようにしていく」と説明する。

 山野さんは「一時保護所は、逃げ場」だと言う。まさに、苦しい子どもが逃げてこられ、安心できる場所であってほしい。(ジャーナリスト・黒川祥子)

AERA 2024年1月1-8日合併号より抜粋

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