児童相談所に付設し、虐待通告などを受けて保護が必要となった子どもを一時的に預かる「一時保護所」。だが、厳しく管理され、学校にも通えないなど、子どもの処遇を巡って問題も指摘されている。AERA 2024年1月1-8日合併号より。
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実親と暮らせない子どもを自分の家庭で養育する「養育里親」の経験がある東日本在住の50代女性が、一時保護所の弊害を最も痛感するのが、教育面だ。里子として預かった10代の女の子は一時保護になって以来、保護が解除されて自宅に帰宅していた間しか学校に通えていなかった。一時保護期間は、親が学校に連れ戻しに来る危険などを鑑み、登校できなくなるケースが多いのだ。その子は、こう話したという。
「私、死にたいって思って生きてきた。でも、学校があったから、今まで生きてこれたんだ」
里親宅にいる間は送迎を条件として、登校することができる。里親の女性は言う。
「ちょうど定期テストの時期でした。何にも勉強していないから、点数は全く取れない。授業もさっぱりわからなくなって、寝るしかない。勉強についていけないことがショックで、登校を渋るようになりました。授業中は、地獄だと……」
一時保護所での学習は、渡されたプリントをやるだけ。唯一の支えであり、逃げ場所であった学校が、一時保護されたばかりに、彼女にとってつらく苦しい場所になってしまったわけだ。
児相での勤務経験を持ち、福祉が専門の沖縄大学教授、山野良一さんは言う。
「もともと不登校の子も多いですし、一時保護中に学校に通うことで危険な目に遭う子がいるのも事実。ただ、学校に行ける子には公用車を使うなどして、通わせる動きもあります」
女性が次に預かったのは未就学児だった。母親がうつで、ネグレクト状態で育ち、再婚した父親から暴力を振るわれていた。
「認定こども園に連れていったら、園長さんに『また違う里親さんになったのですね』と驚かれました」
その子は園児のおもちゃを壊し続けたり、家で突然凶暴になったりと、抱える問題の深さを痛感した。
「児相は里親から十分なヒアリングもせず、彼は一時保護所から里親宅をたらい回しにされていました。10代女子も、定期テストを受けさせるためだけの里親委託で、終われば一時保護所に戻っていきました」