再開発後のホームズの資産価値は…
今回の渋谷の再開発にはこのスキームが使われており、神南小学校の余剰容積率がホームズに移されている。ほかにもさまざまな策がとられた結果、ホームズの容積率は現在の500%から1000%に倍増し、高さ約150mの「モンスターマンション」(森口氏)を建てられることになった。
では、パークコートに住んでいるわけではない森口氏が、なぜ再開発計画に反対するのか。
森口氏は「渋谷区民として60年、不動産鑑定士として30年以上渋谷区の街の変遷を見てきた立場」として、「ホームズ周辺の安全が脅かされる」ことを懸念しているという。
「小学校の真横に巨大なマンションが建てば、子どもたちに心理的な圧迫感を与えるし、盗撮のリスクが高くなります。それだけでなく、ホームズの近くを通る人への安全対策も不十分です。バルコニーのある高層マンションは一般的に、落下物や強いビル風から歩行者を守るために建物周囲に植樹帯がありますが、ホームズには設けられない。渋谷区は『法で定められた安全基準は満たしている』の一点張りですが、違法でないから問題ないという姿勢は、とうてい納得できません」(森口氏)
そしてもう一つ、森口氏が再開発計画に強い危機感を抱いている理由が、「渋谷区の資産が大幅に棄損(きそん)する」恐れがあることだという。
今年8月、森口氏は外部の不動産鑑定士に、再開発前後のホームズ、神南小学校、渋谷区役所、区役所に隣接するLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)の土地の資産価値を鑑定評価してもらった。すると、容積率が減らされる神南小学校は101億円、交通アクセスが悪くなる渋谷区役所と渋谷公会堂は合わせて42億円、今よりも土地の評価額が下がることがわかった。対して、ホームズの土地の評価額は434億円アップする。