鑑定結果に対する、区の回答
「今回の再開発でもうかるのは、ホームズのデベロッパーである東急不動産と清水建設だけ。渋谷区が進める計画としては経済合理性に反しています。もはや民間企業に貢いでいるようにしか見えません」(森口氏)
森口氏は9月、この鑑定評価書を添えた「意見書」を渋谷区長に提出した。区はこの鑑定結果をどう受け止めているのか。担当部署に取材すると、次のような回答があった。
「小学校の建て替えや広場の整備などを行う今回の街づくりは、渋谷区全体の価値の向上につながると考えています。とはいえ、個々の施設の価値にも目配りする必要はあり、鑑定評価も行いましたが、再開発費用の負担額についての事業者側との交渉に支障が出るため、鑑定結果は公表できません」
この渋谷区の回答に、森口氏はますます不信感を募らせる。
「容積適正配分型地区計画によって、公共施設の容積率を民間施設に移して再開発するというのは、全国でもほとんど例がないとされています。入札を行わずに公共財産を民間に譲るのだから、本来は徹底した透明性が求められるはずなのに、この対応はまずいでしょう。マンション建て替えの黎明期(れいめいき)である今、都市計画法を利用して、知らないうちに自治体と企業の間で取引が行われてしまうような事例を作ってほしくありません」
今、森口氏はパークコートの住民たちとも協力して、渋谷区長に対して「再開発計画の一時中止」と「正しい情報の提供」を求める署名活動を展開しており、既に約700筆の署名が集まっているという。