渋谷のど真ん中に高さ150mのタワーマンションを建てる計画をめぐり、周辺住民を中心に反対運動が巻き起こっている。すでにタワマンに住んでいる住民が、これから建つ「より高いタワマン」の建設に反対するという風変わりな構図は、注目を集めている。しかし、眺望や日照をめぐるマンション紛争かと思いきや、その裏には、官民が協力して推し進める巨大プロジェクトへの“不信感”が渦巻いていた。騒動はどこへ向かうのか、揺れる関係者たちの胸中を取材した。
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「渋谷区はうそをつくなー!」「街を壊すなー!」「税金の無駄遣いをやめろー!」
12月5日、渋谷区役所前。どんよりとした冬空の下、集まった十数人が庁舎に向かって声を張り、拳を振り上げた。
デモ隊を主導するのは、区役所のすぐ近くにそびえる地上39階建てのタワーマンション「パークコート渋谷ザ タワー」(以下、パークコート)の住人たちだ。彼らは、渋谷区が進めている、とある“再開発プロジェクト”に怒り心頭なのだ。
実は今、パークコートから約40mの場所に建つ地上14階建てのマンション「渋谷ホームズ」(以下、ホームズ)の老朽化に伴い、パークコートより8mほど高い巨大タワマンに建て替える計画が持ち上がっている。
パークコートの住民のうち、先頭に立ってこの計画に反対しているのが、カジュアル衣料チェーン「ジーンズメイト」元社長の西脇健司氏。西脇氏は3年前、20年暮らした青山のタワーマンションを引き払って、パークコートに引っ越してきたという。
「渋谷のランドマークに住めるというのが決め手の一つでした。こんな大きなマンションがすぐそばにできると知っていたら買わなかった。東南の眺望や日当たりも台なしになって資産価値は下がるし、困りますよ」