日本選手へのラフプレーでイエローカードを出される北朝鮮選手(写真:新華社/アフロ)

 北朝鮮に詳しいコリア・レポート編集長の辺真一氏はこう解説する。

「北朝鮮でサッカーは実質的な国技です。代表は1966年のイングランドW杯に初出場し、ベスト8に進出するという快挙を成し遂げました。その後は低迷を続けますが、2010年の南アフリカW杯に出場、破れはしましたがブラジルを相手に2−1という善戦を果たして注目を集めます。北朝鮮は代表のレベルアップを期し、金正恩総書記の肝いりで13年5月、平壌国際サッカー学校を開校したのです」

 学校は文字通りのサッカーエリートを育成するための機関であり、7歳から16歳の選手が入学対象だという。

「そして平壌国際サッカー学校が開校してから、今年はちょうど10年目という記念すべき年にあたります。最初に入校した選手たちが、代表の中核を担うようになりました。さらに9月10日に建国75年を迎え、10月10日は朝鮮労働党の創立記念日と節目も重なりました。これまで代表は国際大会で活躍することができていません。そのため代表は何が何でも日本に勝利し、サッカー学校の成果を示し、母国の国威を発揚する必要があったのです」(同)

 さらに、選手だけでなく、国民も燃えていた。会場となった杭州オリンピックスポーツセンタースタジアムには大勢の北朝鮮サポーターが詰めかけた。

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収容所や炭鉱に送られたことがあったのは事実