次のチャンスは200年後
もう一つの北山さんのこだわりは、星座の中での位置を変えていく惑星や月を画面に入れ、そのときしか見られない夜空と地上の風景を組み合わせて撮影することだという。
神奈川県・真鶴半島沖にあるごつごつとした岩の間から月が昇り、その上には火星と金星が写っている。その右には天の川が浮かび上がる。
「この場所で、この瞬間でないと撮れない写真です。しかも、水平線上に少しでも雲があればアウトですから、月が昇るのを待つ間はドキドキでした。次に同じような写真が撮れるチャンスは200年後です」
撮影には入念な準備が必要で、まずパソコンのシミュレーションソフトを使って、星や惑星、月の位置を表示する。
「その画面を見ると、撮影したい風景がパッと思い浮かぶんです。例えば、4月だったら、桜が咲いている場面とか。それを元にロケーションを探します」
撮影する方向に桜があり、邪魔なものが写り込まない場所をインターネットで見つける。その上で夜、現地を訪れ、ロケハンを行う。風景と星空との位置関係を正確につかむため、あらかじめその場所で撮影しておく。
「事前に写した写真を使って厳密なシミュレーションを行うことで、撮影位置と時間が少しでもズレたら撮れない特別な星空の風景が写せます」
富士山を拠点に撮影
さらに、北山さんは星景写真と平行して、ロケットの打ち上げも撮影している。
その多くは種子島宇宙センター(鹿児島県)付近から写したものだが、そこから150キロほど離れた鹿児島市の北で写した作品もある。ロケットから噴射された炎でオレンジ色に輝く錦江湾と桜島のシルエットが印象的だ。
「いつも種子島で撮影しているので、たまには別な場所に行ってみるか、と訪れたんですが、こんなに離れているのに、これほどロケットが明るく写るとは、びっくりしました」
創意工夫で夜空の絶景を写してきた北山さんは4年前、結婚を機に、山梨県都留市に拠点を移した。富士山が大きく見える場所まで15分ほどで行けるすばらしい場所だという。
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】北山輝泰写真展「星を巡る」
OM SYSTEM GALLERY 1月4日~1月15日