堅実な守備がサニャの売りだったから、これで自信を持つべきだった。だが、当時の僕はそう思えなかった。

 自信のなさの裏返しか、僕はいつも必要以上にニコニコしていた。ある意味、自分を消し去るように感情をオフにしていたといってもいい。

 そんな姿を見て、サニャが僕にシンプルに伝えてきたのが、この言葉だ。

 今も耳に残っている。

「Be Bad!」

 直訳すれば「もっとやんちゃになれ!」だろうか。「もっと自分の意見を主張しろ」と理解した。

 もっと主張しろ、自分を出せ、サニャはことあるごとに、そんなメッセージをくれた。

 僕が抱える葛藤や苦しみにも、気づいてくれていたのがサニャだった。常に練習で対じしていたから、僕のよさをしっかり理解してくれていた。

 何度も、こう言われた。

「リョウはもっともっとやれる」
「もっと、自分のよさを出していけ」

サニャは強く背中を押してくれていた。それでも僕は、自分を信じられずにいた。自分で壁を作ってしまい、閉じこもっていた。

ポジションをつかむために必要なメンタリティー

 アーセナルのキャプテンになったミケル・アルテタや、チェコ代表のキャプテンのトーマス・ロシツキーも、親身になってアドバイスをくれた。

 アルテタとロシツキーからは、技術的な部分を何度も教えてもらった。

 特にアルテタは、練習でいいプレーがあると、練習後、わざわざ歩み寄ってきて、「リョウ、今日は、とてもいい動きをしていたよ」と具体的な例をあげて、学びを与えてくれた。

 アルテタは現在、アーセナル監督としてチームをしっかり建て直しつつあるが、当時から、言動やプレーぶりで、ピッチ上の監督といった感じがあった。今の成功も「ああ、アルテタならそうだろう」と納得できるものがある。

 今思えば、ここでも失敗したと思うことがある。

 ロシツキーも同じように偉大な選手だが、僕にとってはポジションを争うチーム内のライバルだった。

 それにもかかわらず、どこかで彼らにあこがれの目を持ってしまっていた。世界的スターたちの存在感に圧倒されてしまった。

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