それでも、すべてを指示するのは、一度も姿を見せることのないオーナーだ。
「オーナーは同じような業態で、他の地域でも経営しているようです。どれくらい儲かっているかわからないですが、売り上げが上がっても、僕のバイト料が増えるわけではありませんから」
Uさんは本業も正社員ではない。業務委託のような形で、在宅で仕事を請け負っていて、収入は月15万円。社会保険もボーナスもない。
Uさんが社会人になったのは就職氷河期。数学の教員を目指していたが、大学卒業後に正社員として勤めたのは、パソコンメーカーのコールセンターだった。その仕事では指導役のスーパーバイザーにまで上り詰めた。
「コールセンターってその会社では底辺ですよ。何とか頑張ってやっていましたが、クレーム対応などストレスが多い職場で、上司のパワハラに遭い辞めました」
その後、IT系のコールセンターなどを4社ほど転々とした。サラリーマンが嫌になり、バイク部品を転売したり、派遣会社に登録して食いつないだ時期もある。結婚もしたが数年で離婚。
「人付き合いが苦手で仕事が続きません。結婚ももういいです。現在、国民健康保険は減免、国民年金は免除制度を利用しています。家はオヤジが残した持ち家に住んでいるので、何とか暮らせている状態です」
現在の本業では、「業務を増やして報酬も上げる」と経営者から言われてはいるものの、それがいつになるかわからない。そんな不安定な生活を送っていた時に紹介されたのが、メンズエステの雑用だったというわけだ。