ツアーナース(旅行看護師)と呼ばれる看護師たちの存在をご存じでしょうか?
「最期の旅行を楽しみたい」「病気の母を、近くに呼び寄せたい」など、さまざまな依頼を受け、旅行や移動に付き添うのがその仕事です。連載第2回は、神奈川県でひとり暮らしをする100歳の女性の、姪や弟が暮らす岩手県への移動に付き添ったエピソードをお送りします(本記事は「日本ツアーナースセンター」の協力を得て制作しています)。
自宅で一人暮らしをする100歳の女性の生活
今年100歳を迎える山本多江さん(仮名)は、6月まで神奈川県相模原市の自宅で一人暮らしをしていた。年齢相応の物忘れもあるが、ご近所との交流もあり、公的な介護サービスを受けることなく、生活することができていた。
ただ、足腰はかなり弱っており、毎日買い物に行くのはつらい。ここ数年は、お弁当の宅配サービスを利用する生活だった。
お弁当の宅配サービスは、ただ弁当を届けるだけではない。呼び鈴を鳴らし、利用者に玄関口まで出てきてもらって言葉を交わす。これも配達員の大切な役目なのである。
お弁当を手渡し、利用者の顔を見て話すことで、相手の健康状態や暮らしの様子などをチェックする。配達員は日々の見守りの役割も負っているのだ。
その日もいつもと変わらない水曜日だった。居間でお茶を飲んでいる時、「お弁当です」玄関口から配達員の声が聞こえた。もうそんな時間かと、多江さんはテーブルに手をついて立ち上がった。