あれほどの脚本家が2年かけて撮った映画がこうなるというのは、まぁいろいろあってのことなんだろう。すぐに書店で春日太一著『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』(文藝春秋)を購入。分厚っ!! いやー、寝食忘れて読み耽る。やはりその「いろいろ」がぎっしりと詰まっていた。

 謎がとけると、あのジョギングソープ嬢も愛おしくなってくる。「シロー! 私、勝ったわー!」(主人公のセリフより)と空を仰いで私も叫びたい。

 その後「幻の湖」のストーリーをラジオで喋ったりしてるのだが、3回目くらいからだんだん上手くなってきた。上手くはなってきたのだが「観たいとは思えない」と言われる。悔しい。

 我が家のZ世代にも話してみた。「ソープ嬢」のところは上手くごまかして。そもそもあれ、ソープ嬢って設定は必要なのかな???

私「どうだ?」

Z世代「んー、それ、いつの映画?」

私「昭和57年、1982年かな」

Z世代「あー、41年前」

私「そうか、そんなに前か……」

Z世代「自由だね、すごく」

私「そうかな?」

Z世代「観たくはないけど、かなり自由」

 Z世代からはそんな評価をいただきました。

 個人的には死ぬ前にあと1回くらい観てもいいかな、と思います。でも『鬼の筆』は全世代におススメ。

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。01年7月前座となり、前座名「朝左久」。04年11月二ツ目昇進、「一之輔」と改名。12年3月真打昇進。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。受賞歴は12、13年国立演芸場花形演芸大賞大賞、15年浅草芸能大賞新人賞など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。日本テレビ系「笑点」、ニッポン放送「春風亭一之輔 あなたとハッピー」、JFN系列「SUNDAY FLICKERS」に出演中。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

暮らしとモノ班 for promotion
2024年の『このミス』大賞作品は?あの映像化人気シリーズも受賞作品って知ってた?