東京都千代田区にある神田下水は、地下埋設型の近代下水道として、国内で初めて日本人が造った
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「下水道」とは言うまでもなく、下水を処理するための施設。この記事を読んでいる多くの人にとっては「あって当たり前」で、意識したこともないだろう。

 私たちの生活には水は欠かせない。料理、洗濯、風呂やトイレなどに使う「生活用水」は、ほとんどの場合、一度使用した後はそのまま「生活排水」として捨てられる。生活排水は「下水」の一種だから、下水道で処理される。

 雨が降ってたまったり、集まったりした「雨水」も下水。工場や農場などで使われた後に捨てられる水も、同様に下水に含まれる。これは「産業排水」と呼ばれ、化学物質や重金属などの汚染物質が含まれることがあるため、浄化やろ過を経て流されている。

 つまり、下水道は人々の生活には不可欠なもので、それがない生活は想像しにくいが、国土交通省、農林水産省、環境省の合同調査によると、日本の総人口に対して下水道などの処理施設が処理している人口の割合(汚水処理人口普及率)は92.9%(2022年度末時点)。そのうち下水道の普及率は81%だという。

 下水道がなかったらどうなるのか。そもそも下水道ではどんな処理がなされているのか――。ひょんなことからナノサイズに小さくなって下水道に流された主人公たちが、下水道からの脱出大作戦を繰り広げる『下水道のサバイバル1』から、リポートしたい。

 世界で最も古い下水道は、いまから4000年ほど前の紀元前2000年ごろに、古代インドの都市モヘンジョ・ダロで作られたと言われている。家庭などから流された汚水は、れんがでつくられた溝を通って川に流されたと考えられている。紀元前600年ごろの古代ローマでも下水道が作られた。大帝国に成長した古代ローマでは、多くの人が暮らす都市を建設するのと同時に、大規模な上下水道や運河、公衆浴場などが作られたという。

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近代的下水道が整備されたきっかけは