
日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2023年12月18日号より。
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入社6年目に、配属されていた情報システム室が分社化された西部ガス情報システム(SIS)へ、出向した。希望もしていなかったし、入社するまで関心もなかった情報システム部門で仕事を続けることは、正直、苦痛ですらあった。
だが、ガス料金の計算・請求・督促をするガス料金調定システムという、会社にとって最も重要なシステムの再構築に、朝から晩まで取り組んできた身として「もういい、ではサラバ」とは言えない。
福岡市南区の県立筑紫丘高校へ通った3年間、「好きなことをしてもいいが、他人の勉強の邪魔はするな」という校風に、級友らと勉学そっちのけで、オートバイで街や山野を走り回った。でも、よく分かっていた。
「好きなことをする以上、結果は自己責任だ」
大学受験で、10連敗した。覚悟はしていた。同時に「自由に考えて行動し、迷惑をかけず、役に立つことや楽しいことをする。そして他人を笑顔にする」という人生の指針が、身に付いてもいた。この高校3年間が、道永幸典さんにとって、ビジネスパーソン人生の『源流』となる。1年後、両親の願い通り、九州大学経済学部に合格。そして、分社化される職場とともに出向したとき、『源流』からの流れが勢いを増す。
後ろ向きの気持ちは捨て「システム子会社へいっても、周囲に迷惑をかけず、役に立つことや楽しいことをしよう」と思い直し、着任した。結局、会社人生の3分の2の年月を占めることになる情報システム部門で、楽しむだけでなく、他人を笑顔にする日々を過ごす。