移籍発表4時間後には大谷の写真は消えていた(写真/長野美穂)

 チェンは「もし昨日来ていれば、大谷の大きな写真が見られたのに」と一瞬悔しがったが「ま、球団はビジネスだからもう雇っていない人間の写真を掲示しておけないし、仕方ないか」とあっさり言った。

 台湾の金融機関でサイバーセキュリティー関係の仕事をしているチェンは、大学時代にはアルバート・プホルスのファンで、この球場に週に一回は必ず通っていた。「とりあえず、大谷がLA地域に留まってくれて安心したよ。来年はドジャースタジアムに試合を見に行きたい」と言う。

 チェンはイチローの現役時代の活躍もスタジアムで生で観て楽しんできたが、テレビで見た大谷のフィジカルや筋肉に度肝を抜かれ、一瞬でファンになったと言う。

「自分と同じアジア人なのに、あそこまでとんでもなく大きな身体で、圧倒的なパワーが出せる。ここまでの興奮は、ちょっと味わったことがない。想像を超えてワクワクさせてくれる存在」と語る。

 夕闇に包まれたエンゼルス球場を後にして、大渋滞のハイウェイ5号線を車で進みながらラジオをつける。

 すると「ショーヘイがついについにハイウェイ5号線を北上してアナハイムからLAに移るぞ!ウヒョー!」とスポーツ番組のアナウンサーが絶叫していた。(在米ジャーナリスト・長野美穂)

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長野美穂

長野美穂

ロサンゼルスの米インベスターズ・ビジネス・デイリー紙で記者として約5年間勤務し、自動車、バイオテクノロジー、製薬業界などを担当した後に独立。ミシガン州の地元新聞社で勤務の際には、中絶問題の記事でミシガン・プレス協会のフィーチャー記事賞を受賞。

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