※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 2023年も残りわずか。慌ただしい日々の中、歯の不具合を放置してはいないでしょうか?実は年末年始は、でかぶせものや詰め物が取れるなど、歯のトラブルが起きやすいのです。トラブルの具体例やそうならないための対策について、若林歯科医院院長の若林健史歯科医師に聞きました。

【チェックリスト】こんな症状があったら、年末までに歯科医院へ

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 食事のたびに使われる歯。寝ている間も歯ぎしりなどで酷使されるためか、「昨日まではなんともなかったのに、いきなり割れた」「かぶせものが取れた」など、予期せぬアクシデントが起こりやすい器官です。

若林歯科医院院長の若林健史歯科医師

 定期的に通ってきてくれる患者さんからも、「予約はまだ先なんですけど、歯ぐきが急に腫(は)れちゃったんで、診てください」などといわれることがよくあります。年末年始は歯科医院も休みになるので、こうした患者さんが休み明けにどっとやってきます。お正月明けは電話が鳴りっぱなしなのです。

 年末年始のトラブルで毎年のように経験するのは「お餅」によるものです。「お餅を食べたらかぶせものが取れた」「詰め物が取れた」といって受診されます。お餅は粘着性があるうえに、普段食べ慣れておらず、一年にお正月だけ食べる人も少なくないでしょう。そうした背景から、いつもの食事と同じような感覚でお餅を食べて、かぶせものが取れてしまう人がいるのだと思います。奥歯の補綴物(ほてつぶつ)が取れることがほとんどなので、取れた後は「おせちが食べにくくて困った」などとおっしゃいます。

 何かをかんだ拍子に、「歯が折れた、欠けた」「入れ歯の一部が欠けた」などの患者さんも。「歯が急に痛み出した」という人も多いですね。

「痛み」の原因として多いのは、やはりむし歯と歯周病です。むし歯は神経(歯髄)まで達すると、熱いものや冷たいものを食べたときに痛みが出るようになります。ただ、むし歯の穴が小さくても、奥に大きな穴が広がっていることもあるので、鏡で口の中を見ただけでは、痛くなりそうなむし歯かそうでないかは、わかりません。歯に物がつまりやすくなったり、歯にしみてきたりしたら要注意です。

 歯周病が休みのときに悪化しやすいのは、からだが疲れていることがあると思います。歯周病は免疫とも深くかかわっており、仕事が忙しいときや、心理的ストレスがあると症状が出やすくなります。年末年始は仕事から解放される一方、レジャーや里帰りなどでいつもと違った忙しさがあります。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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